こころ

2013年6月より、3ヶ月間アメリカ、バーモント州にてボランティアプログラムに参加。内容は主にボランティアに関してのこと。

遅ればせながら、の長文

長らく放置してしまいました。まとめをしようしようと思っていたのですが、日常に忙殺されてなかなかできず...
せめてもと思い、以前つくったプログラムレポートの一部を抜粋して載せてみます。

実は、このプログラムに参加する前の1年間、海外留学をしていました。留学は、勉強も旅行も遊びもそこそこ充実し、少数ではありますが、量より質で友人にも恵まれて、大変良い経験になりました。しかし、なんだか自分の中でどこか”やりきった感”の無いまま、気づけば1年間の留学が終わってしまいました。留学中で一番杭が残ったことは何かといわれれば、それは「積極性が無かった」ことです。授業での発言にしても、友人などの人間関係を構築するにしても、いつもどこか受身の自分がいました。留学中はその積極性の無さで、多くのチャンスを逃してきたような気がします。
 以前、大学の先輩に、留学後は日本に直帰せずに、どこか海外でインターンやボランティアするといいとアドバイスをもらっていました。なので留学中から、留学後にできる活動を探していて、そして見つけたのがこのDismas Houseのプログラムでした。留学が終わり、このプログラムに参加する前、私はこのプログラムで弱い自分を打破しようと決意していました。自分ひとりで、未知な環境に飛び込んで、色々切り開いていってやる、今度こそは積極的に行動してやる、そんな風に色々燃えていたのを覚えています。このDismas Houseのプログラムは、いわば留学での後悔や反省のリベンジを果たすためのロスタイムのようなものでした。
 上述しましたが、Dismas Houseの使命は、元囚人の社会復帰を助け、社会と元囚人とのつながりを回復させることです。元囚人の中には、社会や家族とのつながりが絶たれた方もいて、出所後に帰るべき場所や人がいないために、再犯率が高く結局また刑務所に戻ってしまう方もいるそうです。職員の方は次のようなことを言っていました。「元囚人の人たちが、社会の人々とのつながりを回復すること、つまり社会の中に心落ち着ける居場所や家族のような存在をもう一度手に入れることができれば、元囚人の人たちの社会復帰の大きな原動力になる。だからDismasでのあなたの一番の仕事は、住民のみんなと仲良くなって家族のような存在になることだ」と。したがって、私はDismas Houseで住民のみんなと仲良くなる、ということに本気で取り組もうと決意しました。
 ハウスに到着して活動が始まってからは、自分から積極的に住民たちに話しに言ったり、休日は外出に誘ったり、よく住民たちが出没する喫煙所に(私は煙草は吸いませんが)待ち伏せして話す機会を作ったり、大食いキャラを確立して、とにかく夕食を食いまくってみんなに気に入ってもらったり、とにかくみんなと仲良くなるために色々思案しました。すると、次第に一緒に外出に行く機会が増えたり、ハウス内で雑談や団欒する機会が増えたりと距離が縮まって、みんなと仲良くなることができました。今までの人生では、友達は自然にできるもので、自分から働きかけて相手と仲良くなろうと努力したことがほとんどありませんでしたが、今回、アメリカという異国で、日本人自分ただ一人で、年齢層も20代から60代まで幅広い、元囚人の人々と友情・人間関係が構築できたことは自分の自信になりました。
 ただそんな中で、自分の無力感をひしひしと味わったこともありました。それは、昨日まで楽しく一緒に生活していた住民が刑務所に戻された時でした。Dismas Houseでは、人と人とのつながりをつくることが、上述したように大切です。しかし私みたいな3ヶ月しか滞在しない日本人の、しかも英語もつたない若造が、いきなり、住民のみんな太い絆のようなつながりを作ることなんてできず、日々の日常の中で、細い糸みたいなつながりを、会話したり、一緒に飯食ったり、TVみたり、出かけたりして、すこしずつすこしづつ相手との間に作っていくことしかできません。しかし、努力して作ってきたやっと相手との間に紡いだその細い関係性の糸は、何の音沙汰もなしにいきなり断ち切られます。刑務所に戻される理由の大半は麻薬の使用などでした。今までの生活環境だとか、ドラッグやアルコールの中毒だとか、悪い友達連中やら、なかなか、"普通"の社会への復帰は難しいのかもしれないけれど、ただただ自分の無力さを感じました。
 正直、今ですら本当にDismasのみんなの役に立てたのか、十分な自信はないですが、ただひとついえることは、この活動を通じて、よき友人たちに出会えたことが本当に良かったということです。この報告書では便宜上「元囚人」という表現を使用していますが、私にとって元囚人だろうとなんだろうと今は単なる大事な友人であって、この呼び方にすこし違和感を感じてしまいます。今でも、特に仲の良かった住民や、一番お世話になった職員のスーさんとは連絡を取るし、これらの出会いは自分にとってかけがえの無いものになりました。いずれまたアメリカに帰る際は、再開を果たしたいと思っています。また、最初の目標であった、弱い自分の打破、積極的になる、という目標は十分に達成されたと思うし、プログラムを終えて、今の自分に前よりぜんぜん自信を持てるようになりました。
 Dismas Houseでの3ヶ月は、楽しみあり、葛藤苦悩あり、のんびりした時間あり、Excelでガンガンオフィスワークもありと、非常に充実していました。帰国後は大学が始まり就活も控え、めまぐるしい日々を送っていますが、今でもたまにDismas Houseのことを思い出しては、懐かしくそして寂しい気持ちになります。こんな良い経験ができて本当によかったです。

DismasHouse、今でも本当に感謝しています。すばらしい出会いと経験に、感謝。
あの3ヶ月は、すばらしい青春の思い出の1ページになりました。

また、みんなと再会できる日を夢見て!



おわり